UA4 (25V)
インスパイア・セイバー
 

●概要
●心臓
●走り
●仕様
●注目点
●課題
●乗る際の注意点

 ここ最近のホンダは,非常に地道な部分に力をしっかり注いでいる感があります。
例えば,徹底的に「ネガ潰し」と称して,弱点や課題を克服した新型を造り上げる傾向が挙げられるでしょう。
新型オデッセイ,新型ステップワゴン等々・・・・。
キープコンセプトとはいえ,これらの緻密な改善・改良により,高い商品価値を生み出しているのは事実です。
特に内装の質感や居住性への配慮がクローズアップされてきたことは,我々ユーザーにとって歓迎すべき点だと思います。  

 このインスパイアシリーズも例に漏れず,いやむしろ
「改良」という点においては先の車種よりもいち早く取り組まれたと言えます。

先代UA1〜3型もそのひとつですが,ホンダらしい答えとも言えるのがUA4〜5型と言えるでしょう。  

 いきなりで申し訳ないですが,この車はある意味で「インスパイアの長所と短所を一緒に失ってしまった」そんな車だと思うのです。
もともとインスパイアは、特徴あるデザインとメカニズムを持っており、それが魅力と弱点との表裏一体となっていました。
奇抜とも言える作りと,安心すら与える高級感が同居したユニークな車だけに,弱点・課題もまた明快でした。

 では,UA4〜5型の大きな魅力は?弱点は? そう言われても,なかなか思い当たりません。
 それだけ「ネガ潰し」が徹底されたということでしょうか。

 しかし,魅力という点で初代があまりに印象的だったことを踏まえ,少なくとも,明確な魅力は薄れてしまったように感じます。
言い方を変えれば,このインスパイア・セイバーはわかりやすい魅力というよりも
「いぶし銀」のような魅力を持っている,ということです。
質感,安全性,そして速さ。
これらの点では,決してインスパイアの名に見劣りしない。現物を見てそう感じました。  

 

1 デザイン

 

 非常にシャープなデザインになり,先代と同じサイズでありながらスマートな印象を受けます。それまでのインスパイア系とは別の個性をきちんと生み出したデザインであり,当初は個人的にこのデザインに多少抵抗もありましたが,今は街中でシャープな車があまりにも少なく,逆に新鮮というか惹きつけられる部分があります。

 良いと思うのは,まず顔つきです。ここ最近の縦目やツリ目の車たちに比べると斬新というわけではありませんが,スマートでいかにも速そうな印象を受けます。リヤデザインはガーニッシュのないものですが,単調ではなく,プレスライン(折れ線)で表情を与え,中央のエンブレムまわりがすっきりとしています。
 「下手なエアロが似合わない」,これは良いデザインに対する僕なりの賛辞です。特にリヤスポイラーは無しでも充分まとまっているように思います。

 一方,全体的にラインに抑揚があまりなく,大きく見えない,タイヤがサイズ負けしている,そんな感も確かにあります。一層スレンダーになったと言うべきでしょうか。「16インチ装着が冒険だった」とは開発者の談ですが,個人的には17インチ標準でもよいのでは,とさえ思うのです。

 細かい部分では,窓枠以外にメッキモールがほとんど見あたらないのですが,これはバブル後のサルーンの傾向と言えるでしょう。初代を見慣れてしまうと「外観をもっと豪華にしてほしい」と思いがちですが、ゴテゴテするとせっかくのシャープさが失われてしまう気がしますので,これで良いと思います。

 サイドプロテクターはせっかくのデザインポイントですが,さすがに単調で,取って付けた感じがします。もし現行クラウンのように,ドア下部全面を覆う形だと,厚みと抑揚が演出できて結構合うように思いますがいかがでしょうか。
 ドアノブのメッキが復活したのは,ちょっとうれしいところ?

 最近のセダンの傾向として、RVに刺激されたのか後部座席の空間を広くとろうと苦心していますが、このインスパイアも例に漏れません。
 その方法としては、全高を上げ,リヤタイヤを後方に下げ,同時にリヤサスペンションをコンパクトにして,更に前座席を一層前に設定し,更にドアまで薄くしています。このため,縦置きエンジンではなく横置きエンジンとし,前の空間を稼いでいるのです。
 しかしこれだけ凝ったわりには,実は大柄のアメリカ人を想定して前席にかなりスペースを取ったそうで,思うほどに居住空間が広がったわけではないようです。やはりFFサルーンの恩恵を生かし切れているとは言えないようです。

2 実車を見て

 運転こそできなかったが、32V(本革シート)のコクピットに座ることができた。
 その印象は、明らかに今までのインスパイアとは異なる。
 足元がずいぶん広い。しかしATなのにペダルが3つ。サイドブレーキが足踏み式だった。シートもゆったり。先代はコストダウンの波に四苦八苦した作品だったことを思うと、一転してずいぶんと洗練されながら高級感を出したものだと感心する。
 でもやや納得がいかない部分もある。ステアリングだ。かなり太くて、ウッドと革を組み合わせたデザインは良いが、実はエアバッグのためか中心部分が安っぽい。先代も同じことが言えるのだが、突然周りが立派になってきたので目立ってしまう。が,TYPEーS登場と同時に行われたマイナーチェンジではここがきちんと改善され,ステア中央にはしっかりとしたホンダエンブレムが与えられた。
 革シートは大きくゆったりとしているが、ホールド性は甘め。どうやら、「本当に高級サルーンになってしまった」そんな気がしてちょっと寂しい気がする。ただ、TYPE−Sと25Vのシートはサイドの張り出しが大きくなってサポート性が高いということだ。やはり,インスパイアは走りを忘れてはいない・・・。

3 先代との比較

UA2(25S)   UA4(25V) 比較
4840 全長 4840 同サイズ
1785 全幅 1785 同サイズ
1405 全高 1420 +15mm
2835 軸距離 2745 −95mm
1400 車重 1490 +90kg
直列5気筒SOHC
縦置き
エンジン
 
V型6気筒SOHC
VTEC横置き
エンジン単体重量−2kg
190PS/6500rpm 出力 200PS/6200rpm +10ps
24.2kgm/3800rpm トルク 24.5kgm/4600rpm +0.3kgm

 全体のサイズに違いはあまりない一方で,中はかなり広くなっており、これを今回は売りとしています。
 その立て役者が、アコードより採用された5リンクダブルウィッシュボーンのサスペンション。 サスペンションはホンダが相当凝る部分ですが,サス単体の性能を落とすことなく,場所をとらないよう工夫されている独自のもの。下手に電子制御に頼らず,その性能を生かすべくしっかり熟成されているのもホンダならでは。  

 

4 エンジン

 エンジンは直列5気筒と90°V6をやめ、新採用の60°V6。正確に言えば,オデッセイV6・ラグレイト・アヴァンシアに搭載されているアメリカ生まれの「J型」エンジンです。

 このエンジンは最大出力こそ重視していないものの,中速重視のVTECを採用し,低速側をぐっとトルク重視にすることでミニバンをも容易に加速させるユニットに仕上がっています(もっとも,J25Aだけはかなり高回転側に仕立てたようですが・・・)。また,V6の売りである軽量&コンパクトに主眼を置いており,スペース重視のミニバンに対応できるだけの能力を兼ね備えていると言えます。

 結果,このインスパイア&セイバーでも,エンジンだけで2.5は先代比2kg軽量、3.2では実に65kgも軽量化されています。
 にも関わらず車重が大幅に増加したのは、ボディ剛性アップのため。 実際、先代も決して悪くなかった剛性を、なんと新型は更に曲げ剛性+80%、ねじり剛性+70%と大幅増加。明記はされていませんがスポーツカー同様の手法が投じられ、例えばサルーンでありながら標準でストラットタワーバー,ピラー強化等が施されています。

 低速トルクを確保したとはいえ、2.5はやや高回転型。しかしこれは回す楽しさを残すための演出だと開発者は語ります。このあたりのインプレッションは,もう少し先で採り上げたいと思います。

 

5 コンセプト

 開発がHAM(ホンダ・オブ・アメリカ・マニュファクチュアリング)なのでアメリカ人が作ったのか、と思われがちですが、実は日米共同作。ただし、日本での道路状況などを主においているわけではなく、メインはアメリカ市場、そしてアメリカの道路状況というのが真実です。コンセプトは「カリフォルニア・クルーザー」。言われてみてなるほどクルーザー船と思う外観と中身。その割にコーナリング性能もしっかり煮詰めている点はさすがホンダと言えるでしょう。特に加速性能はかなり力を入れており,3200であれば先代シーマ(4100)と同等というのですから凄まじいものです。

 ただ、実は初代インスパイアもコンセプトはクルーザーに求めており、ねらいは同じでも今回は手法が異なるといったところでしょう。もっとも,気のせいか現行型はますますクルーザーの形に似てきたように思います。

 

6 インプレッション  

それでは,実際にUA4(25V)にお乗りの名北5気筒フリーク氏のコメントをご紹介 しましょう。なお,掲載に快く同意して頂き,この場を借りて御礼申し上げます。

25Vの乗り味、自分なりの感想を報告します。
1.足回りの印象
 サスの感じはかなり固めで、路面の凹凸もかなり拾います。良く言えばアメリカ的なバタ臭さがあるのでしょうか?特に低速時にその傾向が強い様です。もっとしなやかだと思っていましたので、若干期待はずれでした。高速時には、その堅さが、シッカリ感に変わり直線だけでなくカーブも安心して走れます。

2.エンジンの印象
 アクセルが重い関係かもしれませんが、低速でのパワーの出方があまりスムーズでなく、低速時の走りがギクシャクしアクセリングに結構気を使います。この辺は、5気筒のほうがスムーズな感じです。走りだしてしまえば、パワーもあり加速も良く、気持ち良く走ります。音もV6の音で、静かですが力強さを感じます。高回転域までストレス無く良く回るエンジンです。

3.ボディー剛性の印象
 これについては、今時の車なのでしょうか、かなり剛性は高い様です。ドアの開閉時の音など良い感じです。

4.内装の印象
 インパネ、シート共、質感については少し安っぽい感じがします。シートは少し小さめですがホールド感は満足しています。装備については、フル装備で不足はありません。

5.全体の印象
 もっとオットリした車かと思っていましたが、結構ヤンチャな印象で、おもしろい性格の車だと思います。可もなく不可もなくと言う様な車よりは、魅力的で、ホンダ的で大変気に入っています。
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